ここでは、主に脳性麻痺障害者の機能獲得及び機能保全のため、また二次障害の予防や治療のための、各種リハビリテーション及び、その他外科的あるいは、内科的療法を含めた、色々な療法を紹介致します。
リハビリテーションの種類は大まかに、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)などに分かれます。
理学療法とは病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。 「理学療法士及び作業療法士法」第2条には「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています。
(公益社団法人日本理学療法士協会Webページより)
ともに脳性麻痺に対する代表的な訓練・リハビリテーション方法です。
ボイタ法は、7つの姿勢反射(引き起こし、パイパー逆さ吊り上げ、ランドー反応、コリスの水平吊り下げ・片脚吊り下げ、ボイタ反射、腋下支持垂直挙上)をスクリーニング方法とし、早期乳児期に脳性麻痺症状の出現する以前に中枢性神経障害(ZKS)を示す患者さんを発見し、原始反射を応用した腹這い・寝返り運動を誘発し脳性麻痺の発症を阻止します。しかし、ZKSの脳性麻痺への移行についての根拠が明らかではない、時に治療が必要な児を見落とす、などの問題点も指摘されています。
一方、ボバ−ス法は、姿勢反射を含めた正常乳児の発達の知識から、脳性麻痺の症状が形成されてくる異常発達を神経生理学的に定義し、それを積極的に予防していこうとするアプローチです。実証的治療結果(療法士である妻の経験を医師である夫が理論化)に基づく、異常反射抑制肢位(RIP)やKey point of controlを用いた訓練により、協調運動や日常生活動作に結びつく基礎的運動能力の改善をめざします。(東京都医学総合研究所 ウェブページhttp://www.igakuken.or.jp/medical/medical02/02-3.htmlより)
1960年代中盤、臨床心理学者 成瀬悟策を中心とした研究グループにより展開された心理理学療法。
脳性麻痺の当事者を催眠状態に誘導すると今まで動かなかった腕が動いたという報告をきっかけとした、脳性麻痺の肢体不自由が脳内の生理学的原因のみで生じるものでなく、心理学的要因が原因の中に含まれるという考え(この事は様々な当事者の体験談からも容易に想像できる)から発展し、トレーナーが適切な援助をしながら不当な緊張をコントロールし、当人が意図した通りに体を動かす事が出来るよう訓練することを目的として考えられた方法、当人が自分自身で自分を弛緩することを ポイントにした療法。
現在では、脳性麻痺の人々に限らずさまざまな、心の問題を抱えている人々にも応用されているようである。
(臨床)動作法から派生し、立川博という特別支援学校の教師によって提唱された療法
動作法は関節を動かすことを主眼にして行うのに対して、静的弛緩誘導法は、その名の通り、関節を動かすことをせず援助者が体の各部位に軽く触れ、当事者が自己弛緩することを誘導する。
リハビリというより療育の一環として行われているようで、PT(理学療法士)というより特別支援学校の先生たちを中心に行われているようである。
1988年に小児整形外科医上田正氏が開発した脳性麻痺や成人の脳血管障害後遺症のための療法です。頸部法、肩骨盤法、肩甲帯法、上肢法、下肢法、の5つの基本手技と4っの補助手技で成り立っています。筋肉の過緊張を緩和し体の歪みや変形を矯正することができ、その効果は、長時間にわたって持続するとされています。
作業療法とは,作業を通して健康と幸福な生活の推進にかかわる職業である。作業療法の主目標は,人々が日々の生活の営みに参加できるようにすることである。作業療法士は,こうした成果を達成するために,人々が自らの参加能力の向上をもたらすような事柄に取り組めるようにしたり,参加をよりよく支援するための環境整備を行ったりする。
作業療法士は,広範囲におよぶ教育を受けることにより,健康状態に由来する身体の機能もしくは構造的な障害があり,かつ社会参加への障壁を体験している人々と,個人あるいは集団レベルで協業していくための知識と技術を身につけている。
作業療法士は,物理的な環境,社会の態度や制度的な環境によって,人々の参加が支えられることもあれば,制約されることもあることを確信している。それゆえ作業療法の実践が,人々の参加を促進するために,環境面の変革に向けられることもある。
作業療法は,病院,保健センター,家庭,職場,学校,矯正施設,高齢者住宅などを含む多岐にわたる場で実践される。クライエントは作業療法過程に積極的に関与し,作業療法の成果は多様かつクライエント主導であり,参加の観点,あるいは参加がもたらす満足という観点から判断される。
作業療法の定義(世界作業療法士連盟(WFOT) 2004) フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
言語聴覚療法とは、医療、介護、福祉、学校教育の分野において、発声発語機能、言語機能、聴覚機能、高次脳機能、摂食・嚥下機能など、主としてコミュニケーション機能に障害のある人に対して、言語聴覚士が検査、訓練および助言、指導その他の援助などの専門的かかわりによって、対象者の機能の獲得や維持・向上を図り、生活の質の向上を支援することである。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
ここでは、主に、頚椎症(頚髄症)に対する手術の術式を紹介します。
頚髄や神経根を前方から圧迫する病変に対し、前方からのアプローチで、病変を直接切除し、脊髄や神経根の圧迫を取り除くことにより、症状の改善を図る手術。
アプローチの際に、病変レベルの椎間板(場合によっては椎骨の一部も)が摘出されるため、摘出した部分に対して骨(患者自身の腸骨から取ってくる)や金属製のネジなどで充填して脊柱を固定することが必要。
脳性まひの患者の場合、不随意運動により、固定した上下の椎骨、椎間板に負担がかかり、数年後には、上下の部位に関しても手術が必要になる場合が多い
首の後ろ側からアプローチし、椎弓の棘突起(背びれの様にうしろに飛び出た部分)を中央で裂き広げ、その間に人工の骨を挟み込み脊柱管を広げることにより脊髄への圧迫を取り除く手術。椎弓切除術は、椎弓の一部を切除して脊柱管を一部開放して脊髄への圧迫を取り除く手術。
脳性まひの患者の場合、患部にアプローチする際、後ろから首を支えている筋肉の接合部を傷つけてしまうことにより、不随意運動の負荷に耐えられず、首が前傾してしまうことが多い。 特に椎弓切除術は、脳性まひの患者には、行うべきではないと思われる。
体の各部分の無駄に緊張している筋肉を切ったり伸ばしたりして緩め、関節の動きをよくしたり、痛みを緩和したり、骨や軟骨の変形を予防するために行われる外科手術
SDR は主に脳性麻痺による痙性対麻痺に対して下肢機能を改善することを目的に過去 20年以上にわたって全世界で広く行われている脳神経外科手術であり,脊髄反射弓の求心路を遮断することで痙性の緩和が得られます。成人では感覚障害が問題となるため適応は少ないものの,小児では術後の筋力低下や感覚障害,直腸膀胱障害も回避できるため第一選択です。
(東京女子医科大学脳神経外科のウェブサイトhttp://www.twmu.ac.jp/NIJ/column/dynamic_disorder/spasticity.htmlより)
ボツリヌス菌(食中毒の原因菌の一つ)から抽出した「A型ボツリヌス毒素製剤」を筋肉に注射し、それが、神経筋接合部に作用して神経伝達物質の放出を阻害して筋肉をマヒさせることを利用して不随意運動を抑える事を狙った療法。
一度の治療で10箇所以上に注射する場合もある。3〜4月で薬効が切れるので、定期的に注射を繰り返すことになる。また抗体が出来てしまうと効かなくなるので注意が必要。
この療法を行なうには、医師は製薬会社の研修を受け資格をとる必要がある。脳性麻痺の患者の場合、頚椎症の外科手術の前や後に、術後の状態を長く良好に保つ為に、この療法を併用することがよく行われているようである。
この療法と同じ効果を狙って行なわれる外科療法として、整形外科的選択的痙性コントロール手術、筋乖離術、などがあるが、こういったサブ的な療法を検討、実施せずに、脳性麻痺の患者で、上記の頸椎症に対する単独の手術を勧められた場合、必ず成人脳性麻痺障害者に詳しい医者にセカンドオピニオンを求めるか、医者を変えたほうがいいと思われる。
各種の神経痛、関節痛に対して局所麻酔剤およびステロイド剤を目的の神経や関節に直にあるいは、周辺に注射して痛みを軽減させ、それに伴い血管の収縮や筋肉の緊張を抑え、2次的な痛みも軽減させる療法。 一般に専門の麻酔科の医師が行う。 一回で痛みがなくなることはなく、薬物療法と併用して複数回行われるのが一般的。
脳脊髄疾患由来の重度の痙縮で、他の療法で十分な効果が得れない場合に検討の対象になる。
バクロフェンは経口の筋弛緩薬としても存在するが、血液脳関門を通過しにくく充分な効果が得られない。そこで体内にポンプを留置して髄腔内に直接、持続的に薬剤を注入し痙縮を軽減させる療法。
機材の故障などが原因での離脱症候群などの合併症もままあるようである。
ホーム | 会の概要 | 我々の抱える課題 | リハビリ&各種療法 | 参考文献
けんこう通信 | シンポジウム | 入会案内 | 用語解説 | リンク集