二次障害情報ネット


用語解説


 

あ行 アテトーゼ  MRI
か行 核黄疸(ビリルビン脳症)  GABA(γ-アミノ酪酸)  頸椎症「頸椎症性脊髄症」  痙性、固縮、拘縮  血液脳関門  構音障害
さ行 ジストニア  シナプス   CT  錐体外路系  錐体路系  脊椎・脊髄   摂食・嚥下障害
た行 大脳基底核
な行 脳室周囲白質軟化症  脳性麻痺  二次障害  ニューロン
は行 不随意運動
ま行 ミエロ(ミエログラフィー)

 

 

●脳性麻痺 〔のうせいまひ〕 (cerebral palsy)

 受胎から新生児(生後四週間)までの間に生じた脳の非進行性病変に基づく永続的な、しかし変化しうる運動及び姿勢の異常である。その症状は、二才までに発現する。一過性運動障害、または将来正常化するであろう発達遅滞は除く。(厚生省脳性麻痺研究班、1968)
 疾病名ではなく病態を表す。
 原因は胎児期のウィルス感染、出産時の酸欠状態、核黄疸、低体重(未熟児)などがあげられる。遺伝する事はない。
アトテーゼ型、失調型、痙直型、混合型などに分類される。
場合によっては、感覚器の障害(主に視覚や聴覚)知的障害、発達障害を合併する。

ポリオ(小児まひ・急性灰白髄炎)と混同されがちであるが、ポリオが生後のウイルス感染による脊髄の異常による麻痺であるのに対して、脳性麻痺は上記のように脳神経の異常による麻痺である。四肢の不自由さに目が行きがちであるが、多くの脳性麻痺者は言語の障害を抱えておりコミュニケーションの不自由さが生活の上で問題になる事が多い。

極軽度の場合、昨今取り沙汰されるようになった発達性協調運動障害(発達障害の一部とされる)と呼ばれる病態とほとんど区別がつかない場合もあるようだが、何をもって判別しているのか定かではないが、専門家の間では、どうも明確に違うものと認識されているようである。

痙直型
 筋肉や関節が固く麻痺して衰弱しまう事を特徴とするタイプ
四肢全てに麻痺があらわれる(四肢麻痺)主に脚にあらわれる(対麻痺)左右片方の脚ないしは腕にあらわれる(片麻痺)などがある。脳性麻痺で一番多いタイプである。

アテトーゼ型
 不随運動を特徴とするタイプ。

不随運動のあらわれ方は精神状態と関連がある。リラックスしている時は、出来る事も、人前や精神的にプレシャーのかかった状態では、うまく出来なくなる事がある。逆に睡眠中は不随意運動は消失している。筋肉は緊張しているが、痙性の麻痺はない。

アテトーゼ型と名前はついているが、その不随意運動は、現実にはジストニアや他のタイプの不随意運動に近い場合もあり、程度によっては、安静にしていればほとんど不随意運動が見られない場合もある。

失調型
素早い動きや微妙な動きが出来ない事が多い。ふるえがある場合もあり筋肉は弛緩している事が多い。

混合型
 上記の2つ以上の特徴があらわれているタイプ。
アテトーゼ型と痙直型が一緒にあらわれるタイプが一番多い。

レット症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症(MAS)、ハンチントン病、パーキンソン病など様な、症状がすすんでいく疾患に対して、脳性麻痺は、非進行性病変に基く異常ということになっているが、当事者にしてみれば、若年の頃は成長に伴う不随意運動の変化、成人以降は二次障害により、 体の状態は、悪くなることはあっても良くなることはあまりなく(体力がつくことで若い頃のほんの短い間だけ障害が軽くなると感じることを除いて)年齢とともに、身体の不自由さは増していく。そういう意味では、当事者にとっては進行性ともいえる。

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●二次障害 〔にじしょうがい〕

 二次障害とは、成人の肢体不自由障害者、(とくに脳性麻痺障害者)で、既存の障害が原因で(常に起こる不随意運動や、痙性による異常な筋肉の緊張により)、骨や関節が変形することで、色々な疾患を発症し、新たに生活上の不自由をきたすことを言う。

 症状としては、肩こり、手足の痺れ、頸や腰、股関節など体の各部関節の痛みやこわばり、運動能力や筋力の低下、排尿の変化、自律神経失調の様な症状など、幅が広く様々ものが見られる。

 発見、治療が遅れると、四肢の麻痺、最悪の場合、全身の麻痺に陥る可能性もある。

 発症する疾患としては、頸椎や、腰椎の変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、変形性股関節症、脊椎側彎症、ポストポリオ症候群などがあげられる。
 30代から発症する例が多いが中には20代でも発症する事もある。
 重度の障害者ほど早く発症する傾向にあるが、生活の仕方や就労形態などにより、軽度の障害者でも若年から発症する場合もある。

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●不随意運動(ふずいいうんどう)

 本人の意思とは無関係に四肢、体幹の一部に現れる、非合目的な運動。
バリズム、舞踏運動、アテトーゼ、ジストニー、振戦、けいれん、ミオクローヌス、ジスキニア、など動きの様子や部位、原因が何処にあるか?などによって、いろんな言葉で細かく言い分けられている。

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●アテトーゼ(アテトーシス) athetose(独) athetosis(英)

 本人の意思とは関係なく体の各部が動いてしまう「不随意運動」の一種、ある姿勢を維持したり運動を行おうとする時に現れる。
 顔面、手足に現れる事が多い。手足や頭をゆっくりとくねらせるような不規則な動きをする。 疲労や精神的緊張によって増悪する。 大脳基底核の病変に由来するとみられている。 脳性麻痺のアテトーゼは症候性アテートーゼの一種である。
治療に関しては、精神安定剤、筋弛緩剤の投与のほか、機能訓練も試みられる事がある。 薬物の投与に関しては、日常生活に与える影響も大きく、難しい側面もある。
装具療法は現在のところ効果は認められない。 外科的療法は、脳性麻痺者の場合、特に適応が非常に難しい。 脳性麻痺の障害者の二次障害の大きな原因の一つとなっている。

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●ジストニア(ジストニー)dystonia(英)

 本人の意思とは関係なく体の各部が動いてしまう「不随意運動」の一種、四肢、体幹をゆっくりねじる、あるいは、ねじった姿勢を一定時間保つ。 「手」に現れれば、「書痙」「頸部」に現れれば「斜頸」という。

【共収縮】

主動筋(関節を動かす際、主に収縮する筋肉)と拮抗筋(関節を動かす際、主動筋と反対に動き、弛緩する筋肉)が同時に収縮する。

【常同性】

異常姿勢や運動障害が一定のパターンをとること。

【感覚トリック】

特定の刺激(感覚入力)によって症状が改善すること。

【オバーフロー現象】

動作をする際それに付随して関係のない筋肉まで収縮する。

が特徴としてあげられる。

パーキンソン病その他の、疾患によっても発現し、他の不随意運動(アテトーゼなど)と混在して出現する事が多い。

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●頸椎症「頸椎症性脊髄症」〔けいついしょう・けいついしょうせい せきずいしょう〕

 頸部脊椎の椎体の変形、椎間板の突出により、脊髄もしくは神経根(脊髄から体の各部に出て行く神経の付け根の部分)が圧迫され痺れや痛み、運動障害等がでる疾患。脊髄本体は痛みを感じないので、発見が遅れる場合がある。健常者でも加齢により発症する事があり、特に稀なものではない。二次障害の原因疾患の代表的な一つ。

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●痙性、固縮、拘縮 〔けいせい、こしゅく、こうしゅく〕

痙縮(痙性)
 関節を他動的に動かそうとした時に、素早く動かそうとすると抵抗が強く。ゆっくり動かすと抵抗が弱くなる状態をいう。

固縮
 関節を他動的に動かそうとした時に、素早く動かそうと、ゆっくり動かそうと、抵抗が変わらない状態を言う(鉛管様固縮: lead pipe rigidity)。場合によっては抵抗が断続的にゆるむことがあるが歯車様(cog-wheel)、いずれにしろ、動かす速度を変えても抵抗は変わらない。

拘縮
 関節を他動的に動かそうとした時に、いくらゆっくり力を入れて動かしても関節の可動域が少なくなっている状態を言う。

痙縮、固縮、の状態では、関節の可動域が狭くなる事はなく、関節の可動域が制限されている場合、かならず拘縮がある。

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●錐体外路系(すいたいがいろけい)

錐体外路とは広い意味では、錐体路以外のすべての中枢神経系を指すが、臨床上の「錐体外路系疾患」でいう錐体外路とは、大脳皮質ー大脳基底核ループのことをさす。大脳基底核から脊髄への直接の出力路はない。

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●錐体路系 〔すいたいろけい〕

 運動を司る神経の一部、皮質脊髄路と同じ。随意運動の指令が伝わる経路、この呼び方は、この神経線維束が延髄の前側で錐体という膨らみを作ることに由来する。この部分に問題があると、痙性の麻痺があらわれる。

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●脊椎・脊髄 〔せきつい・せきずい〕

脊椎
 いわいる背骨。32個の椎体(七つの頸椎、十二の胸椎、五つの腰椎、五つの仙骨、3つの尾骨)と第二頸椎の下から第五腰椎の下にある椎間板(軟骨)からなる。中に脊髄を通す空間があり、その連なりを脊柱管という。椎間板が潰れ、脊柱管にはみ出し、脊髄を圧迫して神経症状を引き起こす疾患を、椎間板ヘルニアという。

脊髄
 脳と並ぶ中枢神経の一つ、脊椎の中にある。そこから、31対の脊髄神経が出ていて、体の各部分の感覚、運動を支配している。


脊椎の図図を拡大する 脊髄神経の図図を拡大する

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●ニューロン

 神経細胞のこと、細胞体、樹状突起、軸索、と三つの部分に区分けされる

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●GABA(γ-アミノ酪酸)

抑制性の神経伝達物質。脊椎動物の神経系では、主に海馬、小脳、脊椎などに存在する。脳内でグルタミン酸から酵素と反応して作られる。

大脳基底核や小脳の細胞に、GABA作動性ニューロンがある。

バクロフェン(リオレサールやギャバロンの主成分)やベンゾジアゼピン(セルシンやデパスなどの主要な成分)、エタノール(お酒に含まれるアルコール)がGABAアゴニスト(GABA受容体の作用を刺激または増加させる薬物)としてあげられる。

GABAは血液脳関門を通過できず、食品として取り入れても、それが神経伝達物質としてそのまま使われることはない。

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●大脳基底核 〔だいのうきていかく〕 (Basal Ganglia)

 大脳半球の深部にある灰白質塊で終脳から発生する神経核。 尾状核(caudatenucleus)、被殻(putamen)、淡蒼球(globus pallidus)、扁桃体(amygdaloid body)、前障(claustrum)、からなる。 被殻と淡蒼球を合わせてレンズ核ともいうが、両者は構造、機能とも異なる。また、尾状核と被殻が同じ構造、機能を持ち新線条体と呼ばれ、これに対して、淡蒼球は旧線条体として区別される。これらは、いずれも骨格筋の運動および緊張を無意識に支配する。

大脳基底核の図図を拡大する

 

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●MRI(magnetic resonance imaging)

 核磁気共鳴現象を利用して生体内をを画像化する装置。 放射線を使わないので被曝しない。靭帯や軟骨も映る。 撮影に時間がかかる(その間動くと鮮明な画像が撮れない)。音が大きい。体内にペースメイカーなどの電子機器があれば故障する場合がある。人工関節なども画像を乱すことがある。

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●CT (Computed Tomography[コンピュタ断層撮影] )

 X線を発する管球とX線検出器がドーナツ型の台座を回転しながら撮影し人体の輪切りの画像をコンピュータを用いて再構成して表示する装置。被曝量が大きい、MRIに比べて撮影時間が短い。軟部組織の撮影には不向き。ペースメーカーなどが体内にあっても撮影できる。

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●ミエロ(ミエログラフィー)

脊髄腔(脊髄が通っている空間)の形状を調べるために、頸椎、もしくは腰椎に針を刺して造影剤を脊髄腔に入れ、X線撮影もしくはCTで撮影する検査。

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●構音障害(こうおんしょうがい)

発音が正しくできない状態をいう(一般には調音という)器質性構音障害、運動障害性構音障害、聴覚性構音障害、機能性構音障害、というぐあいに 原因によりに分類される。脳性まひの場合は、多くは、運動障害性構音障害(発音に関わる体の部分の運動機能の障害「呼吸に始まり声帯やそれを取り巻く筋肉、口や顎を取り巻く筋肉、舌を動かす筋肉など、多岐にわたる」)に当たるようである。区分けすることにどれだけ意味があるか甚だ疑問であるが、吃音とは区別されるようである。

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●摂食・嚥下障害(せっしょく・えんげしょうがい)

口から食べる際の機能障害をこう呼ぶ。食べ物を目や匂いで認識し口まで運び、口の中に入れ、歯で噛み砕き、飲み込むことで、食物や液体を体に取りいれているが、これらの一連の動作の一部、もしくは複数の機能が何らかの原因で正常に機能しなくなることをいう。

摂食・嚥下の機能がうまく働かないと、栄養摂取不良になり、脱水症や低栄養になったり、誤嚥(食道に送り込まれるべき飲食物が気管に入ってしまうこと)を起こし、窒息や肺炎を引き起こしたり、命に直接影響を与える場合がある。また、食べる楽しみが奪われる原因にもなる。

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●シナプス

神経細胞(ニューロン)の間で情報の伝達がおこなわれる部分、科学シナプスと電気シナプスがある。科学シナプスで細胞間の情報の伝達を担う物質を神経伝達物質という。また、科学シナプスは、興奮性シナプス、抑制性シナプスに細分される。ベンゾジアゼピン系(セルシンとしてお馴染み)などに代表される神経に作用する薬剤は、この部分に関わる場合が多い。

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●血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)

健康な脳(それと脊髄を含む中枢神経系)にある微小血管において特定の物質しか通さない機構のこと。脳を有害な物質などから守る役目を果たしている。 逆に脳(それと脊髄を含む中枢神経)に働く薬剤の開発を難しくしている一因にもなっている。例外として脳室周囲器官(松果体、脳下垂体、最後野など)にはこの機構は存在しない。これらの組織が分泌するホルモンなどの物質を全身に運ぶためである。

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●脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia, PVL)

早産児、低出生体重児において、脳周囲の白質に軟化病巣ができる疾患。脳周囲白質部、特に三角部には前頭葉の運動中枢から脊髄につながる皮質脊髄路があるため、PVLでは、その連絡が断たれ、痙性の麻痺が起こる。脳性麻痺の代表的な原因の一つ。MRI、CT、エコー(経頭蓋超音波検査)などで診断される。

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●核黄疸(ビリルビン脳症)

新生児に生理的な範囲を超えて黄疸が生じ、それが持続することで起こる脳の障害、アテトーゼ型脳性麻痺の原因の一つといわれている。

生まれてから数日の赤ちゃんには、皮膚や白目が黄色くなる生理的黄疸が生じることがあるが、それはビリルビンという物質が増えるために起こる現象だが、生理的範囲を超えたビリルビンの増加と継続により、大脳基底核や海馬にビリルビンが沈着し脳の神経を障害することでアテトーゼ型の脳性麻痺が起こる。

ビリルビンが異常に増加する原因はいろいろあるが、一例として AOB血液型不適合やRh不適合。赤血球の溶解(溶血)が盛んになっていることが挙げられる。

未熟児、溶血、新生児仮死、代謝性アシドーシス(糖尿病、慢性アルコール中毒、低栄養、絶食などが原因で起こる)、呼吸ひっ迫、低体温、低タンパク血症、低血糖、感染症、頭蓋内出血、薬剤が、リスク因子として挙げられる。

周産期医療の発達で一時減ったといわれるが、超低体重児の生存率が上がってきたことにより最近では増加してきている。

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