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脳性麻痺の二次障害

第7回シンポジウムの報告


 

【日時】 平成20年1月14日(月)13:30〜16:15
【場所】 国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟102号室
【内容】
「リハビリテーション医療の打ち切り制度撤廃運動」の現状報告
報告者:ポリオの会 代表 小山 万里子 氏
・平成18年度より診療報酬制度が改定され、疾患別にリハビリ日数制限が設けられました。この問題に関わってきた経緯と現状を、ポリオの会の目線から報告。
「ボツリヌス菌治療のメカニズムと現状についての報告」
講師:国家公務員共済組合連合会 横浜南共済病院 整形外科 脊椎外科部長 三原 久範 氏
・痙性斜頚に対する最先端療法である「ボツリヌス菌治療」について、薬が効くメカニズム・実際の効果・副作用・注射の痛みなど、自分で判断して治療を選んでいくために必要な情報を、実例を交えて分かりやすく講演。
★ 休 憩(15分間)
・ジストニア友の会より 署名活動協力の呼びかけ
・シンポジウムについてのアンケート記入お願いと回収
◆ 質疑応答
◆ 16:15〜18:00  講師を交えた懇親会

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◆「リハビリテーション医療の打ち切り制度撤廃運動」の現状報告

ポリオの会 代表 小山 万里子氏

 リハビリテーション医療の打ち切り制度撤廃運動の呼びかけ人の一人となっております、ポリオの会代表の小山と申します。この問題に関わって来た経緯を、ポリオの会の目線から報告します。

 2006年4月の段階で、リハビリ日数制限が始まると言われた時、私たちは進行性の神経筋疾患で除外疾患になるから大丈夫だろうと思っていました。はっきり言って、高を括っておりました。ところが、会員の中からどうもこれでリハビリを打ち切られそうだという話が出てきました。
 その打ち出された内容というのは、まず疾患別に分ける。一人の人間を全体で診ていただくのではなくて、心臓障害・血管障害・脳など、部位ごとに分けるということ(疾患別の打切りについては資料参照)。その上で日数制限をする。これはおかしいのではないか、また、実際にリハビリが受けられなくなってきたというので、署名活動を始めました。
 活動を始める前に、私は厚生労働省に電話をして「ポリオは除外疾患にならないのか」と問い合わせたら、厚労省の答えは「良くなるなら除外疾患になる」とのこと。良くなりません、麻痺は。良くなるなら本当に嬉しいです。そういうことで、脳卒中で倒れられた世界的に有名な免疫学者の多田富雄先生が、やはりリハビリを打ち切られましたが、その先生を中心に活動を行いました。
 5月から署名活動を始めて、6月で44万の署名が集まり、厚労省へ届けました。そこで厚労省がおっしゃるには、「リハビリが受けられなくなったら介護保険に行け」と。介護保険が適用される40代の方というのは、まず脳卒中ですよね。ポリオや脳性麻痺など、他の疾患は関係ない。それなのに行けと言う。それで「介護保険がダメだったら通所リハに行け」と。「通所リハの数はどのくらいありますか」と聞いたら「知らない」と。実際はほとんどない。それから、私たちに対しては「障害児・者医療センターに行け」と言う。これも県に1つか2つ。実際に診ていただけるかどうか、北区の「整枝療護園」に電話で問い合わせたところ、「子供で手一杯で、大人は診られない」とのこと。現実的には無理です。
 10月には国会で国会議員に訴える活動も行い、署名も追加で4万数千通集まったので、それも届けました。それから、去年の3月に「全国保険医団体連合会」と共催で、国会議員も交えてのシンポジウムを開催し、状況を知っていただく活動も行いました。
 そういう結果も見て、44万通以上もの署名が一ヶ月と少しで集まったというのは大変な事なので、厚労省が再改定を打ち出しました。普通は2年間に1回の診療報酬改定なんですが、それを1年で、しかも3月30日に改定を打ち出し、4月1日から実施ということです。医療現場は大変でした。
 その再改定でリハビリが受けられるようになったとの報告だったんですが、その内容を見ると、例えば今まで180日以上受けられていた運動器、それが例えば120日以降は診療報酬が逓減される。そうすると、医療機関としては本当はリハビリをやりたいんだけれども、出来ないんですよね。しかも、大病院と小さなクリニックとでは診療報酬に差がある。例えば、クリニックの診療報酬が20分1,000円です。これで人を雇ってやっていけるでしょうか。それで厚労省は、通所リハの方が医療費については安いから、そちらへ行けと言う。ところが実際に現場のクリニックのお医者さんに聞いてみると、通所リハは3時間単位でしか出来ない。3時間も運動したら疲れてしまって動けませんよ。それが3,800円、しかも送り迎えが必要。実は通所リハというのはお金が掛かるという点を知らんふりして「行け」という、しかも通所リハは本当に数が少ない。例えば文京区では2箇所。そういう状況です。
 ずっと各方面と連絡を取り合って活動は続けていて、「全国保険医団体連合会」また「リハビリテーション医学会」が色々な意見を出して下さっています。私どもの「リハビリ診療報酬改定を考える会」でも、実は議員立法で何とか出来ないかとお願いしているところです。何故議員立法かと言うと、選挙のときにマニフェストとしてリハビリ日数制限撤廃を掲げてくれた議員が民主党にいらして、今その方にお願いしています。昨年の10月に議員とお会いして、その話し合いの結果12月の13日に民主党の厚生労働部会の議員13名が見えて、その方たちに資料(資料参照)を配布して説明しました。患者・当事者の会の方々が何名も出席しました。
 現在、制限制となってから、クリニックがはっきり言ってやっていけなくなり、打ち切るところが増えています。これは病院を責めてはいけないと思います。「リハビリをやりたいけれどもできない」という良心的な病院が生き残って営業を続けてくれないと。そういう病院と一緒に、この問題に反対して行きたいと思っています。
 それから去年の4月の急な再改定で他に決まった事の中については、とんでもない事がいくつかありまして、改善の見込めない患者には、介護保険での受け皿が出来るまで、経過措置として「リハビリ医学管理料」というものを設けると。先生は3ヶ月に一度、良くなったかどうかの細かい文書を出して、届けなければいけない。改善が見込めなければダメなんだそうです。私どもの会員でやはりリハビリを打ち切られた人がいて、打ち切り後2ヶ月ぐらいでしょうか、呼吸も出来なくなって救急車で病院へ担ぎ込まれ、何ヶ月か入院しました。そのくらい悪くなったら、再度リハビリが受けられる。ただそれも、また5ヶ月経ったら終わりです。それで一気に状態が下がって、一度下がったものは元の状態には戻りませんよね。元の所に上げるには、下がった時の日数の3倍ぐらい掛かると思います。
 また、そういう日数制限がありますから、例えば足のリハビリを5ヶ月で打ち切られた場合、良心的な先生方も苦肉の策で、今度は手・肩・股関節のリハビリにすると、病名を変えてのリハビリを続けて下さっていますが、こういう事も気分が良くないですし、きちんとしたものではない。こういう状況がずっと続いています。

 2008年にはどうなるか、改善案が多少出てきました。本当に出来るのかどうか。今現在、介護保険等のリハビリをその月に一度でも受けた人は、同じ月に医療保険でのリハビリを受けられません。ですから、ついうっかりして介護保険のデイケアに行ってしまった人は、もうその月に病院でのリハは受けられない。もう切り替えになってしまうんです。それから、回数も1ヶ月に3回以内とか。そういった形でやっているのを何とか改善して欲しいと言っているんですが、急性期は大事にし、回復期のリハ病棟も増やすと言ってはいますが、それもやはり改善が見込める場合には医療保険を適用し、そうでない場合は介護保険の給付にすると。あくまでも「改善」ですね。どこに行っても「改善」。こういう感じで、本当にどうしたらいいのか困っております。
 それから、最初に申し上げたように、私たちはパーツではなくて、心臓疾患も、手の疾患もあり、私自身、心臓・呼吸器の疾患もある。ポリオにしてもCPにしても、みんな全身的な疾患なんですけれども、それをいつの間にかパーツに分けられてしまった。それはおかしいのではないかと思います。
 おととし署名を提出したときに厚労省の課長がおっしゃったのですが、「日数制限を越えたら自費診療を受ければいいじゃないですか」と。で、「国は混合診療を認めるんですか、国は保険と自費の混合診療を認めていないはずでしょう」と言ったら黙ってしまった。自費にしたら、他の医療費も全額自費で払わなくてはいけない。そんなムチャクチャなことを言って、何事かと思います。
 医療の問題で見ていくと、皆さんアメリカの「シッコ」という映画をご存知かと思いますが、アメリカは民間医療保険によって医療が定まっていて、病院に行くと、どの保険会社のいくらまでの医療保険に入っているかで医療費・治療内容が決まる。もう、そういうレベルになろうという感じで、大手の病院も保険会社のセコムやオリックスが随分系列化しているんですね。長島監督が入っていらした初台のリハなどは、セコムの看板病院ですね。そういうところがどんどん導入されて、お金が無くて、治らない維持期の患者はもうどうでもいいというような事なんですよね、政府から見たら。ずっと医療改革の状況を見ていると、国民に対する医療費の支払いをいかに抑え、自費診療を増やしていくかということだと思っています。ですからこれは、リハビリの問題ではなくて医療制度全体の問題です。
 「リハで良くならないから治療しない」というのは、例えば人工透析や糖尿病の治療を受け始めた方は、一度そうなったら、まず一生治療を続けていかなければいけませんよね。それを、「治らないからもう治療はやめましょう」と言うのと同じ事なんですよね。そういう事を言って良いんでしょうか。最初に厚労省の課長がおっしゃったのは、「だらだらリハがあまりに多いから、それををなくすために、そういう人は介護保険に行ってもらう」と。別に、だらだらリハをしたいからやっているのではなくて、治らないからリハビリを受けている。それで、ポストポリオ症候群、二次障害、私もそうなんですが、細かい波を打ちながら右肩下がりで悪くなっています。一番いい状態を、できるだけ平らにしたいんです。なんとか今の体調を維持することによって社会生活も出来、会社勤めも出来、他にも色々な事が出来ているんですが、これは維持というより悪化を防ぐための治療。ドカンと落ち込むのは急性期、もう本当に動けなくなったりするわけですが、それを何とか食い止めて、右下がりのカーブを出来るだけなだらかに、少なくしましょうと。これを「だらだらリハ」「回復の見込みがない」と言うのは、あんまりではないでしょうか。

 リハビリ問題でずっと私たちの先頭に立って下さっている多田富雄先生の、青土社刊「私のリハビリ闘争」という、この本を読んで下されば、私が今日お話しした事はもう前座の前座で、先生がきっちりと今回の問題点、政府の方針、医療費の抑え込み、日本の医療・福祉関係の崩壊について語って下さっています。是非この本をお読みになって、皆さんに紹介してあげて下さい。大変感動的な本です。先生は何冊もこういう本を出版されていまして、お能の作者でもあります。先生が詩を書いていらっしゃるので、最後にそれを読ませていただきます。

 この戦いの間に一編の詩を書いた
 私の人権を守る戦いの最後を飾ろう
<君は忿怒佛(ふんぬぶつ)のように>
君は忿怒佛のように
今こそ
怒らねばならぬ
怒れ 怒れ
怒って 怒って 地上をのたうち回れ
虐げられた難民
苦しむ衆生のために

君は
血まみれの衣を
ずたずたに引き裂き
腰からぶら下げ
仁王立ちになって睨む
口からは四本の牙をむき出し
血の混じった唾液の泡を吹きながら

君は軍荼利(ぐんだり)夜叉(やしゃ)明王のように
戦いの甲冑に身を固め
火炎の光背に
護るべきものを押し隠す

あらゆる不正を暴く
牛頭(ごず)明王の目を半眼に見開き
君は身の丈六尺の
九頭龍(くずりゅう)明王となって現われ
弱者を救い上げ 権力者を
喰らい尽くす鬼となって

背中に真紅の火炎を頂き
不動の知恵の
蛇の巻きついた利剣を垂直に立て
怒りに右目を中空に見据え
左目は血の涙を流す

馬頭(めず)権現の耳には
慈悲と愛をたたえながらも
なおも君は忿怒佛として
怒らねばならぬ
怒れ 戦え 泣き叫べ

時には阿修羅王のごとく
赤子を貪り食い
女を際限なく凌辱するが
次の日には懺悔に
地上をのた打ち回る
また次の日は
孔雀明王となって
中空に布施をばら撒く

君の名は
何とでも呼べ

悪鬼鬼神の類(たぐい)は
いつでもこの世に現われるものだ
血のような花弁を振りまきながら
雪の夜を泣きながら彷徨う
君は忿怒佛となって
怒りに身を震わせよ
【青土社刊 多田富雄「私のリハビリ闘争」より <君は忿怒佛のように>】

 こういう詩をお書きです。先生は今、言葉は出ません。右手で辛うじてパソコンを打って、こうして本をお書きになっています。こういう先生と一緒に、皆様どうぞご協力下さい。

【配布資料】
 ◆CB NEWS 医療・介護情報 2007年09月06-09日 キャリアブレイン「揺らぐ尊厳 検証:『リハビリ問題』」
 ◆リハビリ診療報酬改定を考える会:民主党厚生労働部会向けリハビリ日数制限問題説明資料

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◆「ボツリヌス菌治療のメカニズムと現状」についての報告

国家公務員共済組合連合会 横浜南共済病院
 整形外科 脊椎外科部長  三原 久範 氏

 脳性麻痺の患者さんにしばしば見られる斜頚や頚部の不随意運動は、二次障害として頚椎の変形を生じる危険があり、頚部や腕の痛みを生じたり、あるいは四肢の麻痺が進行する場合もあることが指摘されるようになってきました。ところが、その元凶である頚部の筋肉の異常緊張に対する治療法といえば、手術によって腱を切ってしまうといういくらか乱暴な方法ぐらいしかありませんでした。この腱切り術では、せっかく切った腱がまたくっついてしまって筋緊張が元に戻ってしまったり、筋肉のバランスがくずれてかえってアテトーゼ運動が強くなったりすることもありました。

 ところが最近、皺取りなどで注目されているボツリヌス毒素が、この痙性斜頚に対しても有効であることが報告され始めています。このボツリヌス毒素はA〜G型に分類され、神経と筋肉の接合部や自律神経節などに作用し、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を抑制すると推察されています。簡単に言うなら、筋肉の収縮力を弱める働きがあるわけです。これを初めて医療に利用したのはSchantzという眼科医で、1960年代から斜視の治療に応用しました。サルによる実験を10年以上試みて安全性と有効性を確かめた後、まぶたの痙攣や顔面痙攣など筋肉由来の疾患に対する治療にも試みられるようになりました。我が国でも、1988年より使用が始まり、その安全性と有効性が確認されています。痙性斜頚に対する使用は2001年から許可されていますが、悪用を防ぐためにしかるべき講習を受けて認可された医師のみが治療を行なうことができ、すべての治療の報告も義務づけられています。治療にあたっては、頚部の多数の筋肉のなかでどの筋肉が異常な緊張を起こしているのかを視診、触診などによって特定する必要があります。それらの筋肉内にボツリヌス毒素を注入する訳ですが、初回の治療では安全性を重視して60単位までとされています。もっとも大きく強い筋を最初に治療し、もぐら叩き現象(以前には異常を認めなかった筋が、本治療後新たに緊張を増し、異常姿勢を再現する現象)の出現に注意しながら以後の注射部位を適宜変更していく必要があります。治療効果は2〜3日後から発現しますが、一回の注射で十分な効果を得ることは少なく、2回目以降に投与量を増やすことで効果が現われることもよくあるので、初回の治療で明らかな効果が得られなくても落胆するのは早計です。通常は3〜4回の治療によって効果が一定に達することが多いようです。ただし、斜頚や筋肉の異常緊張が完全に消失することは難しく、あまりに過大な期待を持たないように注意してください。治療の間隔は2ヶ月以上、できれば3ヶ月以上が望ましいとされています。というのは、抗毒素抗体が誘導されると治療効果は消失するからです。現在の製剤における抗体誘導率は低いとされていますが、必要最小量をできるだけ間隔を開けて投与することが大切なポイントです。

 副作用に関して、ボツリヌス毒素はその名前故に恐ろしい物質という先入観を持ってしまいがちですが、実際に経験する副作用は殆どが軽微なものです。嚥下障害と後頚部筋力の低下が最も頻度が高い副作用です。そもそも一瓶100単位は、吸入での致死量の約0.3%、経口での致死量の0.005%に過ぎないと推定されており、適正に使用すればそれ程危険が高い治療法ではないと考えています。効果持続が平均3ヶ月前後であるため、半永久的に治療を続けなければならないのかと心配する人も多いようですが、一旦姿勢が矯正されることで自然寛解を促進する可能性があり、また本治療を反復することにより筋肉の萎縮が生じてくれば、次第に筋力が低下してアテトーゼ運動も弱まってくれるのではないかと期待しています。注射の痛みについてですが、現在は26ゲージという非常に細い針を用いて注入しているので、それ程の苦痛は無いようです。しかし、毒素の作用範囲は約2〜3cmと狭いので、何箇所も注射しなくてはならない欠点があります。注入予定部位に局所麻酔薬を含有した軟膏やテープを使用することで、注射の苦痛を和らげられればと考えています。

注射の様子

 私達の病院では、すでに25人以上の脳性麻痺患者さんに延べ50回以上投与しており、程度の差はあるもののほぼ全例で筋緊張の緩和や異常姿勢の改善が得られています。特に元々のアテトーゼ運動が弱い患者さんでの効果が大きいようです。今後は、頚椎手術前に投与することで術後の頚部の安静を図ったり、術後疼痛に伴う筋緊張の亢進を予防したりといった使い方も考えています。私達が経験した副作用といえば、一過性の嚥下障害と流涙の増加が1例に見られたのみです。したがって、ボツリヌス療法は決して危険性の高い治療法ではなく、これまで有効な手立てがなかった脳性麻痺患者の異常な筋緊張に対する新しい治療法といえるでしょう。今後は二次障害としての頚椎症性脊髄症の発症予防やその早期治療にも応用したいと考えています。

治療前後の比較
 

 

・ボツリヌス療法についてのQ&A

Q: 注射は痛いですか?
A: 針が太いと痛みが強くなりますが、非常に細い針で注射するので、それ程の痛みは生じないようです。しかし、20箇所以上注射することもあるので、表面麻酔を行なったり、局所麻酔薬で溶解する場合もありますが、あまり効きません。

Q: 入院の必要がありますか?
A: 一般的には必要ありません。しかし、副作用が心配の場合には、初回投与時のみ入院していただくこともあります。もっとも、一番頻度が高い副作用である嚥下障害は、注射後10日ぐらいしてから発生するので、注射後1〜2日の入院は実際にはあまり意味がありません。どちらかというと、安心のための入院です。

Q: 注射当日は入浴できますか?
A: 当日のみ控えて頂いています。しかし、根拠はありません。投与後数分は石鹸で洗わないで下さい。毒素の効果が失われてしまうからです。また、注射した部位は1日くらい揉まない様にして下さい。

Q: ボツリヌス療法の長期効果は?
A: 1〜2回の注射では注射してから約2ヶ月でほぼ元と同じ程度の筋緊張に戻ってしまいます。残念な気もしますが、だから安心だと考える人もいます。5年、10年と長期に投与する間に徐々に過緊張の筋肉が弱くなるのを期待しています。

Q: 長期投与で効きが悪くなることは?
A: 投与間隔が短いと抗体が産生されて効果がなくなる可能性があります。少なくとも3ヶ月は投与間隔をあける必要があります。

Q: 二次障害である頚髄症を予防できますか?
A: 一旦頚髄症を発症した患者さんでは、どんどん症状が進行してしまうケースが多いので、ボツリヌスの効果を待てないことが多いです。私の経験では、比較的軽い頚髄症を発症後にボツリヌス療法を開始し、今日まで手術に至らずに済んでいる方が3名います。

Q: 小児にも投与できますか?
A: 脳性麻痺の小児には、骨や関節の変形が生じる成長期前にこそ投与すべきという意見があります。しかし、薬剤情報には“小児に対する安全性は確立していない”と記載されています。投与量は体重あたり10単位以下が安全と思われます。

Q: 嚥下障害の評価方法は?
A: 反復唾液嚥下テストがあります。自分の唾液を30秒間に何回嚥下できるかを数え、3回以上で正常とします。

Q: ボツリヌス毒素の値段は?
A: 1バイアル(100単位)あたり約96,000円で、およそ10万円ということになります。1回あたり最大3バイアル使用しますので、約30万円かかります。

 

【配布資料】
 ◆アテトーゼ型脳性麻痺患者の頚部不随意運動に対するボツリヌス療法
 (PowerPointによる会場プレゼンテーション/内容を印刷して配布)

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